民間救急の課題と改善点

民間救急、課題や改善点は何か?
実際に民間救急を経営してわかった課題や改善点を記事にしました。
民間救急や介護タクシー事業者さまだけでなく、他の事業者さまや会社員・公務員の方にも通じる内容もあると思います。
ぜひ最後までご覧ください♪

民間救急についてよくわからない、という方はこちらもぜひご覧ください。
> 民間救急って何?

3つの大きな課題

民間救急の課題は大きく3つあります。

民間救急の課題
・認知度の低さ
・依頼の受け方
・乗車時間と降車時間

・認知度の低さ

これは説明するまでもないかもしれませんが、民間救急は認知度がとても低いです。

一般市民ならまだしも、消防職員でも民間救急のことをよく知らない、という方は少なくないでしょう。
実際、私自身もその存在は知っていましたが詳しい活動はよくわかっていませんでした。

利用していただいたお客さまから、「知っていたらもっと前から利用したのに」と言われることが少なくありません。
今までは搬送の手段がなくて、緊急性はないけど、やむを得ず救急車で病院に行っていた。という方が救急搬送後の帰宅の際に弊社を利用してくださったのを機に、病院搬送も緊急性がない場合は民間救急を利用するようになった。ということもあります。

全員とはいきませんが、一定数、民間救急の存在を知っていれば、救急車ではなく民間救急を利用するという方々がいらっしゃいます。
当然ですが「無料だから救急車を呼ぶ」という方は、民間救急の存在を知っていても利用することはないでしょう。
消防職員の方に知っていただきたい大切なことは、
繰り替えしにはなりますが、その存在を知っていれば民間救急を利用する方がいるということです。
その割合も案外少なくないかもしれません。

・依頼の受け方

認知度の低さにも関わってきますが、依頼の受け方にも課題があります。
その認知度の低さゆえ、依頼を受けるのは個人からではなく、営業を行なった老人ホームや病院の、相談員さんやソーシャルワーカーさん(以下、相談員等)から受けることがほとんどです。
ようするに、個人ではどうやって民間救急を探せばいいのかかわからないから、相談員等が代わりに探してあげている。とういうことです。

相談員等も、忙しい業務の合間で民間救急や介護タクシーに依頼をしています。
鹿児島は、まだまだ民間救急や介護タクシーの数が少なく、相談員等が何件も連絡を行う。とういこともあります。

このことによって相談員等だけでなく、結果として利用者個人にも不利益が生じます。
いったいどういうことなのか?

それは、「 業者間の競争が起きにくい 」とういことです。

2000年3月に電力の小売全面自由化が始まりました。
これの狙いは、九州電力が独占していた電力の販売を、新電力会社が参入することによって、さまざまな料金メニューやサービスが生まれることを期待したためです。

これも消費者が複数の電力会社の比較ができることで、初めて電力会社間で競争が生まれるのです。
どこの電力会社も利用してもらいたいため、価格を安くしたり、よりよいサービスを提供しようという力が生まれます。

民間救急の話に戻りますが、説明した通り、依頼はほとんど相談員等からです。
利用者個人が複数の業者を比べて決めることはほとんどありません。

ここで、2つのあるエピソードをご紹介します。
往復の依頼高額な県外搬送です。

往復依頼
 たまにある依頼で、「往復の搬送をA業者に依頼していたが、都合が悪くなったらしく、往路(復路)だけをお願いできないか」とういものです。
そうすることで、お客さんは嫌でも業者間の比較をすることになります。

高額な県外搬送
 鹿児島県から福岡県等に搬送することもあります。
県外搬送ともなると料金が高額になるため、相談員等も相見積もりをとります。
しかし、見積もりをとるのは県内の業者に限ります。
民間救急は事業所のある県内の発着で営業が可能です。
ですので、鹿児島発・福岡着、であれば福岡の業者が鹿児島にお迎えに来ることが可能です。
しかし、相談員等が福岡の業者まで連絡をするのは業者の数が多すぎて、無理があります。
しかも、言ってしまえば高額で利益率の高い、おいしい仕事なので普段から関わりのある業者に搬送をお願いしたい、という気持ちもあるかもしれません。
そんな県外搬送ですが、弊社はお迎えに行くことがあります。
それは全て利用者個人からの連絡によるものです。
料金が高額なためお客様個人が両県で相見積もりをとっているのです。
お客様個人で民間救急を選ぶ、まれなケースです。
料金が高額な場合、相見積もりをとるのは自然な流れかもしれません。

民間救急・介護タクシーでは定期的に勉強会等を実施してサービス向上に取り組んでいます。
その性質上、安全性等を高めるために必要不可欠です。
しかし、利益向上のための具体的な取り組みを少ない気がします。
「金儲けを考えるな」と思う方もいるかもしれませんが、
より良いサービスを提供し報酬をいただくことは悪いことではありませんし、むしろ世の中にとって良いことだと思います。
他より利益が高いということは、それだけ良いサービスを提供できているということなのです。
自分が良いと思うサービスが良いのではなく、お客さんが良いと思うサービスが良いのです。
誠実に利益を向上させるということは、サービスを良くすることと同意義なのです。
それも、利用者個人が比較して初めて意味をなすのですが、、、、

どの職種においても、そうやって切磋琢磨することで良い商品や企業が世の中に生まれています。
しかし、日本では既存の会社や団体を擁護する力が強い傾向にあるので難しいところもあるかもしれません。
Google・Amazon・Facebook・Apple、今ではテスラなどに対抗する企業が日本から生まれないのも、そういった傾向に原因があるのかもしれません。

・乗車時間と降車時間

民間救急は一般タクシーと同様、営業の認可・運賃の認定などは国土交通省運輸局にあります。
金額に違いはあれど、基本的な運賃の考え方は同じです。

距離と時間が運賃に影響しますが、時間においては乗車から降車までです。

民間救急の最も多い搬送が病院間搬送(以下、転院搬送)です。
そして、この転院搬送は乗車までの拘束時間と、降車後の拘束時間は長いことが特徴的です。
いったいどういうことなのか?

A病院からB病院においての転院搬送で説明します。

09:30 A病院 駐車場に到着
09:40 A病院 病棟にストレッチャーで到着
10:00 A病院 病室の患者さんをストレッチャーに移乗
10:10 A病院 駐車中の車に患者さんを収容(乗車)
10:15 A病院 出発
10:30 B病院 駐車場に到着(降車)
10:35 B病院 病室へ移動
10:45 B病院 ストレッチャーを車に収容
乗車時間〜降車時間:20分(約4km)
拘束時間:1時間15分

このように、乗車から降車までの時間は20分間ですが、それ以外の拘束時間が55分間あります。
運賃だと、2,140円になりますが、拘束時間を含めると9,170円になります。
しかし、運賃として請求できるのは基本的に乗車から降車までになるので、9,170円を請求することはできません。
但し、迎車料金や別にサービス料として請求することは可能です。

このように転院搬送においては、移動時間(距離)に比べて、拘束時間が長くなることが特徴的なのです。

民間救急が最優先にすべきこと

今、民間救急業者が最優先でやるべきこと、それは広く普及させることです。

2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「1%の努力」で、日本人は機能優先の病にかかっているとの記載がありました。
まず、優先すべきは広く普及させることで、機能向上はその後でいいのです。
間違えていけないことは、機能を向上させることは必要ですが、最優先ではないということです。
機能を向上させなくていい、ということではありません。

まずは民間救急が、市民の生活に定着し重要なインフラとしての役割にならなければなりません。
広く普及され、民間救急の稼働率が上がれば価格も安くなります。
普及されることは業者にとっても市民にとってもメリットがあるのです。

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