目次
救急車の適正利用とは?
「重症かどうか」だけで判断してはいけない理由
救急車を呼ぶべきかどうか。
これは、多くの方が一度は迷う問題だと思います。
「軽症なら救急車を呼んではいけない」
「重症なら救急車を呼ぶべき」
このように考えられがちですが、実は救急車の適正利用を考えるうえで大切なのは、重症度だけではありません。
重要なのは、緊急度です。
緊急度と重症度の違い
まず、緊急度と重症度は似ているようで意味が違います。
重症度とは、命に関わるか、後遺症が残る可能性があるかなど、傷病の重さを示す考え方です。
一方で、緊急度とは、今すぐ医療につなげる必要があるかどうかを示す考え方です。
簡単に言うと、
重症度=状態の重さ
緊急度=急ぐ必要性
です。
たとえば、状態そのものは重くても、すでに安定していて計画的な受診や転院でよい場合もあります。
逆に、見た目にはそこまで重く見えなくても、時間が経つと急激に悪化する可能性がある場合は、緊急度が高いと判断されます。
消防法上の救急業務
消防法では、救急業務について、傷病者のうち医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを救急隊によって搬送する業務とされています。
ここで注目すべきなのは、消防法上の救急業務が、単に「重症者を搬送する業務」と定義されているわけではないという点です。
大切なのは、緊急に搬送する必要があるかどうかです。
つまり、救急車の利用を考えるときは、
「重症か軽症か」
だけではなく、
今すぐ医療につなげないと危険か
放置すると著しく悪化するおそれがあるか
他に安全で適切な搬送手段があるか
という視点が必要になります。
「軽症だった=不適正利用」ではない
救急車で搬送されたあと、医師の診断で「軽症」と分類されることがあります。
しかし、それだけで「救急車を呼んだのは間違いだった」とは言えません。
なぜなら、通報した時点では、本人や家族が正確に重症度を判断することは難しいからです。
胸の痛み、突然の強い頭痛、呼吸苦、意識がおかしい、ろれつが回らない、片側の手足が動きにくいなどの症状は、結果的に軽症であったとしても、通報時点では重大な病気が疑われることがあります。
救急車の適正利用とは、結果だけで判断するものではありません。
通報時点で、緊急に医療につなげる必要があると考えられる状態だったかどうか
ここが大切です。
救急車を呼ぶべき症状
次のような場合は、迷わず119番通報を考えるべきです。
意識がない、反応がおかしい
呼吸が苦しい、呼吸をしていない
強い胸の痛みがある
突然、ろれつが回らない
片側の手足に力が入らない
顔の片側がゆがむ
けいれんが続いている
大量出血している
急な激しい頭痛や腹痛がある
高齢者や持病のある方で、いつもと明らかに様子が違う
このような場合は、重症かどうかを自分で判断しようとせず、119番通報してください。
救急車以外の選択肢が適する場合
一方で、緊急性が高くない場合には、救急車以外の手段が適していることもあります。
たとえば、
予定された通院
退院や転院
状態が安定している方の病院受診
寝たきりや車いすの方の移動
酸素やストレッチャーが必要だが、緊急ではない搬送
このような場合には、自家用車、タクシー、介護タクシー、民間救急などの選択肢があります。
特に民間救急は、緊急性は高くないけれど、移動に専門的な配慮が必要な方に適した搬送手段です。
救急車と民間救急の役割
救急車は、単なる移動手段ではありません。
救急隊が現場で状態を確認し、必要な応急処置を行い、適切な医療機関へつなぐための公的な救急システムです。
一方、民間救急は、緊急性は高くないものの、寝台搬送、車いす搬送、酸素使用、付き添いが必要な方など、通常の移動が難しい方を支える役割があります。
整理すると、
救急車は、緊急に医療へつなぐ必要がある人のため。
民間救急は、緊急ではないが、安全な移動に配慮が必要な人のため。
このように考えると、役割の違いが分かりやすくなります。
救急車の適正利用とは
救急車の適正利用とは、単に「軽症なら呼ばない」ということではありません。
本当に大切なのは、緊急に医療へつなげる必要があるかどうかです。
命の危険や、急激な悪化のおそれがある場合は、ためらわず119番通報してください。
一方で、状態が安定しており、緊急性が低い場合には、民間救急や介護タクシー、自家用車など、他の移動手段を選ぶことも大切です。
救急車は限りある地域の大切な資源です。
本当に必要な人へ、必要なタイミングで救急車が届くように。
そして、緊急ではないけれど移動に困っている方には、民間救急という選択肢があることを知っていただければと思います。
まとめ
救急車を呼ぶかどうかは、重症か軽症かだけで判断するものではありません。
大切なのは、
今すぐ医療につなげる必要があるか
放置すると悪化するおそれがあるか
安全に医療機関へ行く手段があるか
という視点です。
救急車と民間救急、それぞれの役割を正しく理解することで、地域の救急医療を守りながら、必要な方へ必要な支援を届けることができます。


