どうやって救急サービスを向上させるか
例えば、Googleならどうやって消防署の救急サービスを向上させるでしょうか。
Googleでは10倍の成果を求めるそうです。
10倍の成果だと、努力でなんとかしようとしても、なかなか難しいですよね。
そのため、努力ではなくアイデアや取り組みで成果を上げるよう社員に求めるそうです。
消防署では救命率を上げるために様々な取り組みが行われています。平成3年に救急救命士が誕生し、気管挿管やアドレナリン投与など特定行為と呼ばれる処置を救急隊が行えるようになりました。また市民がAEDを取り扱えるようになったり、救急講習が普及されてきました。
最近でも救急救命士の処置は拡大され、アドレナリン投与の他にブドウ糖投与が可能になったり、心肺停止の傷病者だけでなく、大量出血や重度脱水の傷病者にも点滴が行えるようになっております。
データで見てみる特定行為
例えば、特定行為の一つである、アドレナリン投与は全出場件数のどれくらいの割合で実施されているでしょうか。
実はアドレナリン投与を実施している事案は、どこの消防署でも全出場件数の1%未満であることが多いのです。
他にも気管挿管やブドウ糖投与などの特定行為がありますが、そのほとんどん実施率は1%未満で特定行為を必要としていない、若しくは必要であっても実施されていません。
救命率を上げるため、とても重要な特定行為ですが、その実施率は極めて低いと言わざるをえません。
このごくわずかな実施率の特定行為だけに、目を向けるより、それ以外にも何かやれることがあるのではないでしょうか。
時間という絶対的な存在
至極当然であるのに、あまり考えられていない、むしろ考えないようにされているのではないかとさえ思う時間の概念。
救命の可能性は1分経つごとに約10%低下する。これは救急講習でもよく言われています。
しかし、全国的に救急車の到着時間は遅くなっているのが現実です。
99%に目を向ける
前述したように、アドレナリン投与の実施率は1%未満です。他全ての特定行為を合わせると1%を上回りますが、個別にみてみるとほとんどが1%未満です。
特定行為を実施する事案は緊急性の高い事案であり当然、日々の訓練が重要になってきます。
実際、消防署で行われるシミュレーション訓練のほとんどが、特定行為を実施する想定になっております。
では、99%の事案に対してどのように向き合えば良いのでしょうか。
99%全てに緊急性がないわけではありません。しかし、緊急性のない事案がほとんどであるのもまた事実です。
救急隊また救急救命士という限られたリソースでどうすることが一番国民にとって良いのでしょう。
緊急性の低い搬送を減らすことで、救命率を向上させることは可能です。
それとも、「救急車は緊急の際に利用して」と、呼びかけても実際に利用する国民はそうでない使い方をするため、それに合わせてサービスを向上させることが良いのでしょうか。
しかしそれでは本当にタクシー代わりになるのではないでしょうか。
提供する側の意見を通すのか、利用する側に合わせるのか。
実際は提供者(消防)ではなく利用者(国民)側に合わせ、119通報時に緊急性がないと判断できても救急車を出動させるのが現実です。
そうであるならば、どうせ出動させるのならそのサービスを向上させるべきなのでしょうか。
これは救急隊個人としての取り組みではなく、消防署全体の取り組みとしての問題であると考えます。
そろそろ、99%に本気で目を向ける時なのではないでしょうか。