救急隊による転院搬送とは

救急隊が住宅や屋外などから傷病者を搬送することは、みなさんご存知かと思いますが、病院から病院への搬送も救急隊の業務のひとつになります。

転院搬送の割合

転院搬送の出動の割合は全国平均で約8%と少なくありません。

地域によっては20%を超える消防署もあります。

転院搬送の多い地域の特徴として、その消防署のある市町村以外への搬送が多いことです。
市町村外へ搬送することで、長時間隊員が不在となるデメリットがあります。

転院搬送の事故種別

救急隊が出動する内容は事故種別というものがあり、各地域の消防年報でも確認することができます。

その中には急病・一般負傷・交通事故などがありますが、転院搬送という項目は単独で存在せず、「その他」の中に含まれています。
「その他」の項目は転院搬送以外に、「医師搬送」・「資機材搬送」・「その他」の3つの項目があります。

転院搬送以外の、「医師搬送」・「資機材搬送」・「その他」は、明らかに救急隊を必要としない事故種別です。
転院搬送についても「搬送元の病院の管理下」という概念があるため、この救急隊を必要としないであろう「その他」の分類に属しているのではないでしょうか。

そうでなければ転院搬送は急病・一般負傷の次の項目に示されているはずです。

転院搬送のルール

転院搬送については、総務省消防庁から転院搬送のルール事項が示されています。
外部リンク(総務省消防庁)

内容は

  • 緊急に搬送が必要であること
  • その病院では治療が困難で、搬送先での専門的な治療が必要であること
  • 要請元医療機関が、その管理と責任の下で搬送を行う
  • 原則、医師又は看護師が同乗すること

などです。

転院搬送の現場活動

転院搬送は、その要請元の病院の責任と管理下にあるため、救急隊が処置を実施することは、ほとんどありません。

地域によっては通常3名の救急隊員のところ、2名で搬送する消防署もあります。
運転席と助手席に救急隊員が乗り、後部座席は搬送元の病院の看護師さんが対応する形です。

こうなると、本当に救急隊員が必要なのか疑問に思ってしまうのも無理がないかもしれません。

病院所有の救急車

病院によっては、救急車を保有しているところもあり、その病院からの搬送若しくはその病院への搬送の場合、病院救急車を利用して搬送を行います。
もちろん、病院の医師や看護師が同乗し患者さんの管理をしますが、運転手は事務員や外部のタクシードライバーの場合もあります。

ここに疑問をもつことはないと思いますが、そうなると消防署の救急車はどうでしょうか?

消防署の行う搬送も、傷病者の管理は医師や看護師です。

病院救急車のように、運転手や助手席の隊員に特別こだわらないのであれば、消防署の転院搬送も外部が行ってもよいのかもしれません。

救急車以外の搬送方法

総務省消防庁は、緊急性のない搬送の場合、病院救急車や消防署が認定している民間救急を利用するように促しておりますが、実際のところはかなり難しいです。
そもそも病院救急車を保有していない病院の方が多いですし、なかなか職員をそこに当てることもできません。

民間救急とはいうと、現在のところ予約での利用が多く、いざ「今から来てください」と呼んでも、「予約があり行けません」という事業所が多いのではないのでしょうか。

救急隊は救命を

救急隊は医療の届かない傷病者を、救命しながら医療の元である病院へ搬送するのがメイン業務です。
その他の業務に時間を取られていては助かる命も助からないかもしれません。
救急隊でなくても可能な業務であれば、そこに救急隊を当てなくてもよいのではないでしょうか。

それぞれ役割があります、救急隊は救急隊を必要とする現場で救命をしなければなりません。

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